カンボジアでかかりやすい感染症について
カンボジアでかかりやすい感染症について
-カンボジアの生活で心がけること-
カンボジアは衛生事情が整っておらず、日本に比べると劣悪です。プノンペンは6月に入ると、雨季のシーズンも本格的となります。1日に数時間雨が激しく降り、排水状態も整っていないため、道路に汚水を含んだ水溜りが所々にでき衛生状態も悪化します。またプノンペン市内の上下水道の浄化施設は改善されているものの、配管や施設の管理は未だ十分ではありません。よって水道水の飲水やローカル屋台などでの食材や食器の管理の衛生状態にも注意が必要です。今回はカンボジアで特徴的な感染症について、さらに感染しないために日常生活で気を付けることについて説明します。
表1 カンボジアでかかりやすい感染症(日本内科学会雑誌11月号より一部引用)
感染経路 | 生活上の注意 | 感染症 | 主な症状 | 途上国における1ヶ月の推定罹患率 | ワクチンの有無 |
飲食物から感染 | ミネラルウォーターを飲む加熱した料理を食べる | 旅行者下痢症 | 下痢嘔吐 | 20-40% | |
A型肝炎 | 発熱、黄疸、全身倦怠感 | 0.03% | ○ | ||
腸チフス | 発熱、腹痛 | 0.02% | ○ | ||
蚊に媒介 | 皮膚を露出しない昆虫忌避剤を塗る
殺虫剤を散布する |
マラリア | 発熱、悪寒 | 1.1% | |
デング熱 | 発熱、発疹 | 1% | |||
飛沫感染 | 手洗いやうがい人ごみを避ける | インフルエンザ | 発熱、咽頭炎 | 1% | ○ |
性行為で感染 | 不特定の性行為を控える医療行為にも注意 | B型肝炎 | 発熱、黄疸、全身倦怠感 | 0.004% | ○ |
HIV | 発熱、リンパ節腫脹 | 0.002% | |||
動物から感染 | 動物に近寄らない | 狂犬病 | 恐水発作、けいれん | 0.4% | ○ |
傷口から感染 | 傷口を消毒する | 破傷風 | 口が開かない、けいれん | データなし | ○ |
飲食物から感染
-旅行者下痢症-
経口感染によって下痢、腹痛、嘔吐、発熱が主な症状が生じ、細菌による感染性胃腸炎(チフスも含む)とウイルスによる感染性胃腸炎によるものや、各種の寄生虫、原虫、アメーバ赤痢などがあります。
-A型肝炎-
A型肝炎は汚染された飲料水や食物からの経口感染によって、倦怠感、発熱、黄疸(目の白い部分が黄色になる)などの症状が出ます。治療は安静、対処療法と抗ウィルス薬の投与がありますが、いちばんの予防策はワクチン接種です。
-腸チフス-
チフス菌がついた飲食物から感染する細菌性感染症です、主症状は発熱と腹痛ですが、消化器症状がない場合もあります。ワクチンの予防接種を推奨します。
予防は、飲料水、飲み物、食べ物に常に注意をすること
蚊に媒介
-マラリア-
マラリアはハマダラカ(おもに夜間に活動)の媒介によって感染します。プノンペンではマラリアにかかる心配はほとんどありませんが、アンコールワットの奥地やタイ、ベトナム国境などの森林地帯は注意が必要です。熱が続き、2~3日目には診断が可能で、早く抗マラリア薬を飲むと効果があります。
-デング熱-
デング熱はネッタイシマカ(日中に活動)の媒介によって感染します。突然の高熱、関節痛、頭痛が起きる症状が3~4日続いた後、4、5日目に発疹や出血斑が出ることがあります。治療は対処療法となり、血小板が急激に減少するデング出血熱となると死亡することもあります。
予防は蚊に刺されないこと、長そで長ズボンの着用や虫除けスプレーを使用する
飛沫感染
-季節性インフルエンザ-
インフルエンザは南北半球では冬、熱帯では1年中発生しています。カンボジアは赤道近くに位置し南北半球の冬の時期に合わせてインフルエンザの罹患率が高くなっています。1年に2回のワクチン予防接種を推奨しています。
予防は手洗いやうがいを行うこと、人ごみを避けること
性行為で感染
-B型肝炎-
B型肝炎は血液や体液からの感染によって、倦怠感、発熱、黄疸(目の白い部分が黄色になる)などの症状が出ます。治療は安静、対処療法と抗ウィルス薬の投与がありますが、いちばんの予防策はワクチン接種です。
-HIV-
HIVは精液や血液を介して感染し、カンボジアでは急速に広がってあり、主に性行為によるものです。接触後に不明な持続する熱やリンパ節の腫れなどの症状が出てきます。
予防は不特定の性行為を控えること、医療行為でも注意が必要
動物から感染
狂犬病狂犬病は発病すればほぼ100%が死亡する感染症で、イヌだけでなくキツネ、アライグマ、コウモリなどの動物に咬まれることによって感染します。ワクチンの予防接種が有効ですが、万一、狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれた場合には、追加接種が必要になります。
予防は動物に近寄らないこと、触らないこと
傷口から感染
破傷風は土壌のいたる所に存在している破傷風菌(神経毒素)が体内に侵入することで感染します。カンボジアで多発しているバイク事故やひったくりによる転倒等で、傷口が破傷風菌にさらされ感染する可能性があります。破傷風の特徴的な症状としては、口が開かない、けいれんなどです。ワクチンの予防接種が有効ですが、万一、発症した場合には、追加接種が必要になります。
予防は傷を負ったら傷口を消毒すること
カンボジアでは日常生活で予防策を図っていても、感染症にかかるリスクは高くなります。
いつもと体調が違ったり、症状がある場合には早めに医療機関へ受診してください。
プノンペン生活情報サイト「ポステ」に掲載していただきました。